子供のおかげでナイナイ矢部は「芸人らしさ」を改められた
一般的には岡村の方が笑いに前のめりで、矢部は笑いにニュートラルで一歩引いたイメージがあるが、「逆かもしれない」と証言するのは、2人と長年ラジオを共にする構成作家の小西マサテルだ。プロデューサー的に俯瞰で見ながら「何があっても笑いでなんとかしようという感覚が働くっていうのはむしろ矢部」だと。
「なんといっても、矢部くんの当時のメールアドレスが『tsukkomi@~』ですから(笑)」(とうこう・あい「QJWeb」2021年1月28日)
高校を卒業するまでは「人間」だったという矢部だが、芸人になってからは無理をして「芸人」であろうとした。
「『芸人とは』っていうキャラづけとして、多少は女遊びしとかなとか、朝まで飲まなとか、そういう思いがあった」(「QJWeb」20年10月10日)と。それは存在そのものが「芸人」だった相方・岡村に対するコンプレックスからだったのかもしれない。
よく子供ができると、芸人は芸風が変わってしまうなどとネガティブな文脈で語られることが多い。それを矢部は隠そうとしない。「完全にお笑いのことは1回考えなくなった」(同前)とまで明かす。それでも「焦らなかったんですよね。『俺、今人間なんや』と思って」(同前)と。