植木等師が「サブちゃんも色々考えてたんだな」と笑顔で…
喜劇役者になれれば良いナアー、なんぞと十七、八才の頃からボーっと漠然と思っていたんでしょうな。大阪から上京する時、まあ小さい劇団を受ける為だったんですがネ、アワよくば三木のり平師に弟子入りする、なんてチャラチャラ考えてまして。
何故植木等師ではなく、のり平師なのか。もうガキの頃からのり平師一本だったんですが、中学に入った頃からクレイジーキャッツがデビューですかな。ヤッパリ歌ってコントしてなんてのは、ハデやかで乗りますわな。で、こりゃもう植木等だぜ! なんて全く素人の傲慢さという奴で、のり平師から植木師に乗り替えて、イヤまてよ、ヤッパリクレイジーキャッツはハデ過ぎかなあ、ここはジックリとやっぱ、のり平だろう、なんてセコな頭でアーでもないコーでもないと、日々悶々としていて。
近所の友達はと云えば、皆それぞれ学業に社会にと、真面目にやっているし、ヤッパリ芸能界に行くなんぞ、正気の沙汰じゃないなあ。俺のようにバカでオッチョコチョイだから、あんなハデな世界に憧れんのかなあ、ウンそうだろな。イヤしかし、このまま会社勤めしても、ウダツは上がらないし、第一学歴がないんだから生涯知れたもんだ。オー! やっぱヤルシカない! ヤレーヤレ! てな塩梅で。