トレンド入り「ドリフに大挑戦SP」が投げかけた“痛みを伴う笑い”の本質と価値

公開日: 更新日:

 26日に放送された「ドリフに大挑戦スペシャル」(フジテレビ系)は、過去のコント映像を流すいつもの特番とは違い、サンドウィッチマン劇団ひとり、ハライチ澤部、アンミカ、磯山さやから、総勢30人の“ドリフラバーズ”が往年のドリフのコントに挑戦するという異色の企画だった。

 高木ブー(88)、仲本工事(80)、加藤茶(78)のドリフターズメンバーも出演し、カンニング竹山、澤部らによる「もしも威勢のいい風呂屋があったら」、Snow Manの「ヒゲダンス」など、全16本の名作コントが再現された。

 しかし、往年のドリフのコントだけあって、タライは落ちてくるわ、一斗缶で頭は叩くわ、水浸しになるわで“痛みを伴う笑い”のオンパレード。

 BPO(放送倫理・番組向上機構)が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議対象とすることを表明し、大晦日の「笑ってはいけない」(日本テレビ系)は休止。関係者は否定しているものの、休止にはBPOの影響も取り沙汰される中、堂々と痛みを伴う“ベタな笑い”を見せつけた格好だ。

 コントに挑戦した出演者たちは、「タライが落ちてくるとかパイを投げるとか、あんなんやりたくてお笑いやってるので、今回できたなって感じ。我々コメディアンが受け継いでいかなきゃいけない」(サンドウィッチマン)、「両親が生きていたら、一番見て欲しかった番組です」(アンミカ)など、ブログなどで大喜び。

 SNS上は「最高に笑いました!」「現代らしくコントが成立してる」などのコメントが相次ぎ、一時は「#ドリフに大挑戦」がツイッターのトレンドワード入り。視聴率でも、テレビ朝日系の「ポツンと一軒家」(15.6%)と日テレ系「イッテQ!」(10.1%)の日曜夜の“2強”に続き、9.4%と大健闘した(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯)。

「一種の古典芸能」

 リーダーのいかりや長介が他界して17年、昨年は志村けんも新型コロナでこの世を去った。

 ドリフの十八番ともいえる「痛みを伴う笑い」について落語家の立川志らく(58)は自身のツイッターで、「ルールの中で楽しむ。笑いも同じです。殺人の映画も同じ」「痛みを伴う笑いがダメとなるとドッキリはどうなる? ヤクザに絡まれる、落とし穴、幽霊に驚かされる、全部ダメになる。そのうち芸人は人に笑われる商売だから人格否定につながるのでその存在すら否定されてしまったり。芸人って本来非常識な存在。それを笑いに変えて人々を楽しませる」など持論を展開している。

 お笑い評論家のラリー遠田氏はこう話す。

「今回、ドリフが昔やっていたネタを今の芸人がやるという前提がありましたが、今の芸人がやっても面白いということが証明されました。ただ、この手のネタをそうした文脈なしに当時を全く知らない今の若い人が見たら、不快だと思ってしまう人もいるでしょう。一方、コントはお芝居の延長であり、痛そうに見えても痛くないとか、芸人の腕の見せどころでもあります。そうした意味ではドリフのコントは一種の古典芸能のようなところがあると思います」

 現在、第一線で活躍する芸人たちによって、昭和から令和の時代にリブートされた“痛みを伴う笑い”はコントの王道といえるだろう。 

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松本人志「事実無根」から一転、提訴取り下げの背景…黒塗りされた“大物タレント”を守るため?

  2. 2

    島田洋七が松本人志復帰説を一蹴…「視聴者は笑えない」「“天才”と周囲が持ち上げすぎ」と苦言

  3. 3

    人気作の続編「民王R」「トラベルナース」が明暗を分けたワケ…テレ朝の“続編戦略”は1勝1敗

  4. 4

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  1. 6

    松本人志が文春訴訟取り下げで失った「大切なもの」…焦点は復帰時期や謝罪会見ではない

  2. 7

    窪田正孝の人気を食っちゃった? NHK「宙わたる教室」金髪の小林虎之介が《心に刺さる》ファン増殖中

  3. 8

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  4. 9

    菊川怜が選んだのはトロフィーワイフより母親…離婚で玉の輿7年半にピリオド、芸能界に返り咲き

  5. 10

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇