<142>「二度と田辺には行きませんから」早貴被告はいやいや一周忌を行った
「いいのよ。そんなこと」
人のいい木下さんは場を和ますように笑顔を見せたが、早貴被告は面白くなかったことだったろう。
私は早貴被告がどこに住んでいるのか全く興味はなかったし、会いたいとも思っていなかったが、マスコミの知人たちは私が密かに彼女と連絡を取っていると勝手に思い込んでいたようだ。
「早貴の近況を記事にしたらどうですか?」
そのように言う知人もいたが、そんな気は全くなく犯人逮捕のXデーを心待ちにしているだけだった。というのも早貴被告と会ったところで彼女が真実を打ち明けるということはしないハズであるから、彼女が暮らしている場所も知らなかったし、興味もなかったというのが実情である。(つづく)