改革期に入った皇室は「外の世界に飛び出したい」が本音 政治権力はそれが理解できない

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「眞子クライシス」で始まったこの連載も今回で終了する。2年ほどの連載だったが、この間に皇室と国民の関係が変化し始めているように思う。

 その一つが、皇室と国民の立つ位置に差がなくなってきたことだ。たとえば、小室家の問題で眞子さんの婚約が批判され始めた頃、秋篠宮家にも問題があるのではないかとは言われたが、正面から秋篠宮家を強く批判することには遠慮があった。それが最近では、頻繁に秋篠宮家批判の記事を目にするようになった。当初は「まさか」と驚いたが、最近では「またか」と当たり前のようになり、批判記事がネットに転載されることも少なくなった。今のところ天皇陛下への批判は出ていないが、過去には1993年に「美智子皇后バッシング」があったことを考えれば、今後もないとは言えない時代になっている。

 90年代と違うのは、批判が始まったら、たちまちSNSによって全国に拡散され、以前のメディア対皇室の構図でなく、国民対皇室の問題に広がることだ。「眞子クライシス」でも週刊誌の批判はあったが、その記事を軸に礼節を欠いたひどいコメントがネット上にあふれた。そうなると手の施しようがない。今後もそういうことが起こりうるのだから、象徴天皇制を維持していくことは並大抵でないことが予想できる。

 そのSNSを、宮内庁も活用する準備をしているという。これは秋篠宮さまが、バッシング報道に「反論するには一定の基準を設けることも必要」とお誕生日会見で発言されたことがきっかけだった。宮内庁のホームページはお世辞にも見やすいとは言えない。なにしろ広報室がないお役所だから、官報のようなホームページになるのは当然で、その意味でSNSは歓迎すべきだが、問題は、SNSはもろ刃の剣であることだ。

 SNSは多くの国民の意見を聞くという意味では便利だが、匿名だと感情が過剰に増幅されやすく、「眞子クライシス」で見たようにイエスかノーの二項対立になりやすい。つまり、あっという間に炎上してしまうということだ。そのときは、燃え盛る炎を鎮めるために何がしかの変革や決断を迫られることだろう。

 皇族の感覚も違ってきている。

 皇室とはいえ、ネットやメディアを通して俗世間のことはいつでも知ることができる時代である。仮に眞子さんが戦前の人なら世間知らずは当然だっただろうが、令和の眞子さんの感覚は一般人とあまり変わらないのではないか。一方で、戦前ほどではないとはいえ、今の皇室にも平安朝の文化がそこかしこに残っている。世間の生活を知れば、当然ながら昔の習慣が残る皇室がいかに堅苦しいかがわかるだろう。

 本音でいえば、外の世界に飛び出したいのが今の皇族かもしれない。そうしないのは、皇室のことを考えて我慢されているからだろう。その一方で、人生のほとんどを赤坂御用地で過ごされるため、世間の常識との間でギャップが生まれる。とすれば、今後はさまざまな問題が噴出しかねない。暴露本を出版した英王室のヘンリー王子もその一例ではないだろうか。

 皇室は今後、いやが応でも改革を迫られる。それなのに、皇位継承を男系男子にこだわる旧態依然とした一派がこの国を支配しているのだから、何をか言わんやである。おそらくここ数年は皇室にとって試練の年になるのではないか。「眞子クライシス」は、そのことを多くの人に知らしめたのだ。皇室がこの状況をいかに乗り越えていくのか、今後も注意深く見守っていきたい。 (おわり)



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マコクライシス 『眞子さんの乱』で見えた皇室の危機

奥野修司著(日刊現代・講談社 1540円)

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