膨大なセリフをものともせず主人公の多面性に迫る亀田佳明 ゴーチ・ブラザーズの「ブレイキング・ザ・コード」
タイトルは「解読」の意味だが、「CODE」は規範、道徳の意味もある。つまり、「法を犯す」というダブルミーニングでもあり、チューリングの苦悩を表しているが、それは自分の性的指向を解き放つという意味もあるのではないか。
亀田は難解な数学用語を含む膨大なセリフをものともせず、とっぴな行動や言動からアスペルガー症候群ではなかったかという説もあるチューリングの多面性を見事に演じた。
稲葉賀恵の演出はスピーディーでテンポもよく、登場人物の背景まで浮かび上がらせた。蛍光管の明滅によって時間軸を移動させるなどスタイリッシュな演出が光ったが、時空の往還がいまひとつ分かりにくかった。
チューリングが愛したミラー役の水田航生、アランを追及するロス、一度は婚約を交わし、その性向に理解を示すパット・グリーン(岡本玲)、暗号解読に引き込むノックス(加藤敬二)、初恋の相手クリストファー(田中亨)、チューリングの過去を知るジョン・スミス(中村まこと)と実力派が脇を固めた。
息子が同性愛者であることを知ったサラ役の保坂知寿の慈愛に満ちた悲壮な演技が舞台に深い余韻を残した。休憩15分を挟み2時間45分。シアタートラムで23日まで。
作=ヒュー・ホワイトモア、翻訳=小田島創志、演出=稲葉賀恵、音楽=阿部海太郎。
★★★★