新刊「居場所。」早くも6万部! 吉本興業・大﨑洋会長が今、伝えたいこと
世の中も人生も、二者択一では割り切れない
「昔、芥川賞を受賞した作家の庄司薫さんの『赤頭巾ちゃん気をつけて』の4部作の第3作目に『白鳥の歌なんて聞こえない』ってありましたよね。その中で人間には平等に訪れる死というものを見つめすぎないほうがいい、見つめすぎるとドロ沼にはまるっていう、くだりがあったと思うんです。死はすごく大事なことだからこそ、見つめすぎないほうがいいんじゃないか。そのフレーズが印象に残っていた。僕自身、サラリーマン生活の半分強ぐらい、窓際と左遷の連続でしたから」
「12のしないこと」の<白黒はっきりさせようとしない>について、大﨑氏はこう言う。
「競争させないってこともあるでしょ。世の中、『こいつがええやつや』、『こいつが悪いやつや』言うたって、誰でもええとこありますしね。餃子食っても、『この餃子、不味いね』っていうやつがいれば、『俺、めっちゃ好きや』ってやつもおるし、競争させて勝った、負けた。俺のほうが幸せや、幸せやない。金持ちや、貧乏やとかいってね。人と比べて単純に二者択一で割り切れるのか。世の中も人生もそんなわけないから、はっきりせんでええんちゃうかって、悩んでいる若者に言いたかったんです」
芸人にとっては頂点に立つことが目的だと思うが、8の<目的地を決めようとしない>については?
「確かに今までやったら、テレビで自分たちのコンビの名を冠した番組を頂上と言っていたじゃないですか。それは一つの山かもわからないけど、最近の子たちは、YouTubeで好きなことしたり、飲み屋のアルバイトしたりして、時間いっぱいありながら、20万円稼げたらええなって言うんですよ。例えば、キャンプ芸人ということでキャンプ専門家として本を出版したり、キャンプの講義をやって、キャンプで子供と遊んで“楽しい”って言うのが、その人にとっては山の頂点という考え方もある。今までの所謂、“ザ・芸能界”を目指さないでもいいんじゃないですか」
■松本人志の引退説については?
この本では、大﨑氏が初代マネジャーを務めたダウンタウンについても触れられている。コンビの一人、松本人志にここ最近、引退説が流れているが。
「年に1回ぐらいしか会わんけど、どうするんやろね。これだけは本人が決めることですからね。もし、そういうふうに言われたら『そうか』とか言うしかないですよねぇ。その時になってみなわかりませんけど、『辞めてから何して遊ぼうか?』ぐらいのことは言うかもしれません」
「居場所。」は、10万部を超えるベストセラーになるのも時間の問題のようだが。
「出版印税は自分が受け取るのは違うと思ったので、吉本が設立した沖縄のエンタメ校『沖縄ラフ&ピース専門学校』の1階でやっている子供食堂に寄付します」
日本のお笑いをリードする大﨑氏率いる吉本興業。今後、どんな展開をしていくのか注目したい。
(本多圭/芸能ジャーナリスト)