映画「バービー」が証明するエンタメとしての映画の変化…大ヒットの必然を識者が分析
■エンタメの社会性
もうひとつのテーマが女性と男性との社会の在り方。元々バービー人形は女の子のために作られたので、ケンをはじめとする男性の人形は添え物。「バービーランド」は女性にとっては完璧だが、彼女たちを喜ばせるために存在する男性の人形にとっては味気ない世界でしかない。ケンは人間世界で、男性たちが社会の要職に就いて、結構好き勝手に生きている姿を目の当たりにし、「バービーランド」に戻って女性たちを洗脳。こちらの世界を男性主導型の“男社会”に作り変えてしまう。これにバービーたちが、どう反応するかが後半の見どころになるが、女性と男性という“性”によって社会の構造を捉えた描き方が、逆にジェンダーレスが叫ばれる今の状況にわかりやすい形でマッチした感がある。ケンたちの、あまりにも知性に欠ける男性の描き方(それは人形であるためでもあるのだが)など、男性バッシングの色合いが強い部分もあるが、製作も兼ねた主演のマーゴット・ロビーは、これまでも強い女性像を前面に出して人気を得てきたし、監督のグレタ・ガーウィグも「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」(19年)など、女性の精神的な自立をテーマに作品を作ってきたので、彼女たちにとってこのテーマは自然に出てきたものだろう。