林家彦いちさんが見た木久扇師匠の勉強家な一面「接待されるのは好きじゃなかった」

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「最近、何読んだ?」とよく聞かれた

 師匠木久扇は基本的に明るいお酒。でも、酒席で接待されたり芸をやるのはあまり好きじゃなかったですね。打ち上げでも早めに引き揚げる。「ああいうとこ(酒席)で長くしゃべってるとしくじる」と。それが経験から来た考えなのかはわかりませんけど(笑)。

 師匠は繊細な人で、修業時代は僕の弟弟子は礼儀やしきたりでよく叱られてました。僕とは映画好きという共通点があり、映画のお話でよく盛り上がりました。

「マルクス兄弟のあのシーンが面白くて」と伝えると「そうそうそう!」と。マルクス兄弟やバスター・キートンのスラップスティックなドタバタがお好きで。それから時代劇の痛快なチャンバラが大好きなのはイメージ通りかと思います。ああ見えて、本もよく読むし、勉強家で「最近、何読んだ?」とよく聞かれましたよ。

 僕が一本立ちしてからは会う機会は少なくなりましたが、創作落語をやる僕についてのインタビューで「大したもんだ」とコメントしてくれたのを人から聞いて、うれしかったです。直接褒められることはないですが(笑)。

 落語界も多様化が進み、昔は寄席の演目に新作はほとんどなかったのが、今は増え、女性落語家が古典を女性バージョンに変えてやったりしてます。守るものは守り、変わるものは変える。今の新作も受け継ぐといつかは古典になっていく。過去の師匠たちのネタをそのままやるわけではなく、芸は取り入れ、噺は変えながら伝えていく。落語はそういった伝承芸だと思うんです。そこは一門の区別は関係なくです。

■酒がおいしくなったのは30代後半

 お酒の話に戻りますと、おいしく感じるようになったのは30代後半。きっかけはおいしいワインをすすめられたこと。それまでは、翌日頭が痛くなることが多い格安のワインしか知らなかったけど、試しにソムリエさんが出してくれた重みのある赤ワインを飲んでみたんです。そしたら、おいしくて! 安いワインのように頭が痛くならない。

 それ以来、酒席では赤ワインを頼むようにしてズッシリとした重みのあるものや、白ならシャルドネと好みもできて。今は自宅でも飲みますよ。2人の弟子が小さいワインセラーを買ってくれて、そこに保存してます。映画を見ながらチーズをつまみに赤ワイン。この飲み方は還暦過ぎても続けたいですね。

(聞き手=松野大介)

▽本名=安田修 1969年7月、鹿児島県出身。89年に弟子入り、93年から林家彦いちとして活躍。SWA(創作話芸アソシエーション)の一員。

10月16日「彦いちVS清水宏 RRRをぶっとばせ! オレたち流ラクゴ・ロック・リアリティ」
◇伝承ホール(渋谷区文化総合センター大和田)。詳しくは公式ホームページまで

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