蛙亭「“ふわっとした世界”があったんで『イワクラとなら何かできるかな』とワクワクした」
ですが、緊張感からくるもの、恥ずかしさからくるものとは違う「テレ」を感じていました。
30年以上も前に上岡龍太郎さんから「(横山)ノックさんにはテレがあるんですよ。あれだけアホなことやり倒しているのに、どっかテレてるんですよ。せやからお客さんから支持されるんです。かわいがられるんです。このテレがなかなか出されへんのですよ。僕(上岡さん)もよう出さんでしょ。いま人気絶頂の鶴瓶、さんま、紳助にはこのテレがあんねん。せやから誰がどうケチつけようと間違いなく彼らは大成しますよ」とテレビ局の楽屋で伺ったことがありました。その時は当時の私には話が深過ぎておっしゃっている意味がよくわかりませんでしたが。イワクラちゃんを見た時にこの「テレ」を感じました。
中野くんは「変わった人(ボケ)を演じる時の境界線の話をされて、いまはリアリティーのことだったんだと理解しています」と言ってくれました。ちゃんとわかってくれています。
講師が「これは!」と思う子たちを正規の授業とは違う「選抜クラス」に選んで、月に1回、別枠でネタ見せをするのですが、こんなに気になる「蛙亭」であっても、私の選抜に選ぶことはありませんでした。他の講師が選ぶであろうと思ったことと、まだ形を決めかねて試行錯誤しながらやっていた2人を、変に「本多色」に染めたくなかったというのが正直な気持ちです。もっともっと七転八倒して生みの苦しみを味わって「蛙亭」をつくって欲しいと思っていました。