正月休みに見たい「ホラー映画」傑作8本 鑑賞するとストレスや痛みが和らぐかも?
映画史に残るホラー映画の名作「エクソシスト」が公開から50年となって、今月1日に続編「エクソシスト 信じる者」を公開。オリジナル版から半世紀後の姿を描いていて、早くも評判だ。ホラー映画は健康によいという研究結果もあるだけに、この正月休みはホラー映画を堪能してはどうか。映画通イラストレーターのクロキ・タダユキ氏に寄稿してもらった。
■ザ・フォッグ(1980年/米国)
米カリフォルニア州の小さな港町アントニオ・ベイの海上で、青白く不気味に発光する霧が発生。脈打つように漂いながら帰港中のトロール船を襲い、船員全員を血祭りにあげた。さらに海から町中を覆い尽くすと、霧の中に潜む邪悪な何者かが町民を襲う。やがて町の創設にまつわる呪われた秘密が明らかに……。
傑作ホラー映画「ハロウィン」の生みの親ジョン・カーペンターが監督・脚本・音楽と三刀流を手掛けた寓話的ホラーで、スクリームの女王ジェイミー・リー・カーティスが名作「サイコ」の主演女優ジャネット・リーと母娘出演したことも話題になった。
目を背けるような流血シーンはほぼなく、恐怖の渦に静かに巻き込まれていく。カーペンター・タッチが遺憾なく発揮され、霧は生きているかのようにドアの隙間などから侵入する。CGなき時代に見事な出来栄え。リメーク作品より本作の方がゾクゾクする。
■SF/ボディ・スナッチャー(1978年/米国)
サンフランシスコの公衆衛生調査官の周りで、人格が別人化する異変が発生し、仲間と共に調査を開始する。謎の宇宙生命体が植物を介して人類侵略を企てていることを知り、仲間も次々と犠牲になり、調査官たちにも魔の手が伸びる。
SF作家ジャック・フィニーの「盗まれた街」を、インディ・ジョーンズの原案にも携わったフィリップ・カウフマンが映像化。就寝中に巨大なさやが奇怪な肉の塊を産み落とし、蚕の糸のようなモノで本人そっくりの肉体が形作られると、元の人間は顔面陥没で消滅する。そのため熟睡したらヤバイという絶望的恐怖に身が震える。
本作の脚本に惚れた演技派ドナルド・サザーランドが主人公を怪演したほか、「スタートレック」のスポック役で有名なレナード・ニモイ、「ザ・フライ」のジェフ・ゴールドブラムら個性派が集結。アナログな特殊効果が、かえってリアルさを生む。ニコール・キッドマン主演のリメークより本作の方が怖い。
■悪魔の手毬歌(1977年/日本)
日本独特の怖さを味わうならコレ。舞台は、実在しない岡山の鬼首村。村に伝承する手毬唄にのっとって若い娘が、腰の曲がった謎の老婆に次々と殺される。20年前、村で起きた迷宮入り殺人事件との関連を察した名探偵金田一耕助が難事件に挑む。
名匠市川崑監督は、昭和の原風景を織り交ぜながら、おどろおどろしく呪縛的なシーンを描く。その演出は抜群で、東宝の石坂金田一シリーズの中でも一番! といわれるのも納得だろう。
評価の高い本作は豪華な役者陣も見ものだ。特に定年間近の警部役・若山富三郎の渋さが光る。ホロリと涙モノのラストも、シリーズの中で抜きんでている。
■サスペリアPART2(1975年/伊)
若きピアニストは、ドイツの美人超能力者が窓ガラスで首を刺されて殺されるシーンを目撃。美人新聞記者と手を組み、犯人を追うと、周りで凄惨な連続殺人が発生。事件に巻き込まれ、犯人から殺害予告が……。
傑作ホラー「サスペリア」のダリオ・アルジェント監督のサディスティックな演出が映える本作は、日本では“PART2”でも、続編ではない。プログレッシブロックバンドのゴブリンによるトラウマ的旋律と西洋童謡が巧みに融和。要所に猟奇的な惨殺シーンが描かれるが、アルジェントの手にかかると美しさを感じる。
“重要なものを見ているのに、見過ごしている”というトリック演出も秀逸。ハリウッド映画とは一線を画す、ドロドロとした怖さがクセになる。
■悪魔の沼(1977年/米国)
スプラッター映画の金字塔「悪魔のいけにえ」に続き、トビー・フーパーがメガホンを取った傑作。
テキサスの田舎町、人里離れたモーテルを訪れた元娼婦の若い美女が宿のオーナーに殺されるシーンから始まり、B級ホラー独特の不条理さがフルスロットルで展開する。しかもモーテル脇には大きな沼があり、オーナーは犠牲者を沼に生息するワニのエサにしていた。
前作「悪魔のいけにえ」と同じく本作も実話が元ネタ。不協和音的な音楽と絡み合い、理不尽な展開が大胆に描かれる。
大ヒットホラー「エルム街の悪夢」シリーズの殺人鬼フレディ役のロバート・イングランドがまだ無名時代で、迷惑なヤリチン野郎を好演。彼がワニの餌食になるシーンは、気の毒だが痛快だ。
■エンゼル・ハート(1987年/米国)
しがない私立探偵は、謎の紳士から消息不明の歌手の捜索依頼を高額で受ける。調査の過程で、奇怪な連続殺人が……。
イケメンだったころのミッキー・ロークが探偵役にドハマリで、謎の紳士役はロバート・デ・ニーロ。トレバー・ジョーンズのジャジーな旋律が渋く流れる中、ロークとデ・ニーロの火花散る競演に引き込まれ、やがて背中に冷水を浴びせられたように怖くなる。
映像化不可能とされたベストセラー小説を職人監督アラン・パーカーが湿度高めの映像で丁寧に活写。鑑賞後、しばし恐怖の余韻にひたりたくなる知的ホラーの傑作だ。