春風亭昇太さん、柳家喬太郎さん…噺家という怪物に魅せられた夜
噺家という人たちの芸というものは本当に凄いと思うのだが、最近またしびれる現場を見た。
うちの小宮が芝居のプロデュース公演していて、昼公演だけの日に、夜に落語会を企画した。小宮とゲストが一席ずつ落語を聴かせるのだが、第1夜が春風亭昇太さん、2夜が柳家喬太郎さんという、100人に満たない劇場では、これは何とも贅沢な興行だった。
そこで私に、小宮が一席やったあとに、ゲストが現れ、あれこれダメ出しするコントを書いてくれと依頼があった。
1夜目の小宮の落語は「権助魚」。旦那の浮気にヤキモチをやいたオカミさんが飯炊きの権助に、旦那にお供して妾宅を突き止めるように命じるが、旦那に買収された権助は今晩は隅田川で釣りでしたと嘘をつき、アリバイに魚を買って帰るのだが、ニシンや目刺しやかまぼこを買ってすぐにバレてしまうという滑稽話だ。
そこで私は、昇太さんが「釣られた魚の悲しみが出てない」とか「昭和初期の戦争前夜の空気感がない」とかむちゃくちゃ言う台本を書いたのだが、よくウケてくれて一安心した。