映画「箱男」の魅力とは…安部公房の世界を“娯楽”と“現代”に引き寄せた

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 石井岳龍監督、永瀬正敏主演の「箱男」が8月23日に公開された。今年は原作者・安部公房の生誕100年を記念して、未完の遺作「飛ぶ男」をはじめとする彼の作品が再版され、イベントなども開催されている。このタイミングで登場する「箱男」は、1997年に同じ石井監督、永瀬主演、さらには今回も出演している佐藤浩市の共演で映画化されるはずだった作品。そのときはドイツ・ハンブルクで撮影の準備を重ねていたが、クランクイン寸前で製作中止が決まったという、彼らにとっては幻の企画だ。以来27年、「箱男」の映画化を「一度も諦めたことはなかった」と語る石井監督の念願がかない、ついに作品が完成した。

 これまで安部公房の小説の映画化には、小林正樹監督の「壁あつき部屋」(56年)を皮切りに、「おとし穴」(62年)やカンヌ国際映画祭審査員特別賞も受賞した「砂の女」(64年)、「他人の顔」(66年)、「燃えつきた地図」(68年)などの勅使河原宏監督作があるが、それらはすべて原作者が脚本も手掛けたもの。安部公房文学特有の不条理や難解さが織り込まれ、その“わからない面白さ”が逆に注目を集めてきた。

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