“国内唯一”弁護士芸人・こたけ正義感に刮目! 話題沸騰ライブ『弁論』は「袴田事件」ネタで度肝を抜かれた

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コクハク

弁護士芸人の単独公演が話題に

 弁護士芸人・こたけ正義感(38)の単独ライブ「弁論」が話題となっている。かつて年間100本以上のライブに出演し、自身もライブ主催者の経験もある現役芸人・帽子田(仮名)が、ライブ「弁論」の秀逸な点を以下のように語る。

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凄まじいライブを見てしまった…

 こたけ正義感はワタナベエンターテインメント所属の現役弁護士芸人である。最近メディアでもよく見るが、今でもきちんと法律事務所に籍を置いており、正真正銘の弁護士芸人だ。普段は「変な法律」「実際に会った変な判例」などをネタにしたフリップ芸や漫談をしている。

「弁護士芸人」と聞くとキャラ芸人っぽいが、R-1の決勝進出経験もあり、ライブでは無敵で平場も面白い、完璧に実力派の芸人。医者や教師、自衛隊出身の芸人は割と多いが、僕が知る限り弁護士芸人はこたけ正義感ただ一人だけだ。

 そんな日本唯一の弁護士芸人・こたけ正義感の単独ライブ「弁論」が1月15日までYouTubeにて無料公開されていた。かなり話題になっていたので見た人も多いのではないだろうか。

 日本のお笑い界ではかなり珍しいスタンダップ形式(編注:マイク1本でステージに立ち、観客に話しかけるようにパフォーマンス)のライブだが、芸人だけでなく著名ライターやテレビマン、アーティストまで大絶賛の嵐だった。皆褒めているし相当面白いんだろうな、と軽い気持ちで視聴したが、見終わったあとは度肝を抜かれた。

「同じ芸人としてクオリティの高い単独を見せつけられて悔しい」というより、「こたけ正義感、凄まじい」とひよってしまうくらいだった。

「弁論」はこたけ正義感が弁護士であることを大いに生かして展開していく。法律を軸に話題が広がっていくのだが、法律に関して全く無知な観客でも笑ってしまうボケや構成になっている。

 例えば「肖像権の侵害・受忍限度」「名誉棄損」などの法律用語をあげて、それに関する判例やエピソードを続けていくのだが、その判例やエピソードが超面白い。

 必ずトピックの前に法律の内容をかなり分かりやすく説明してくれるので、続くボケがもっと面白く感じる。こたけ正義感がいとも簡単にやるので分かりにくいが、素人に法律について短い時間で理解させるのは驚異的だ。

 そんななか、もっとも世間に注目されたのは「袴田事件」のくだりだろう。こたけ正義感は弁護士会の広報として、日本最悪の冤罪事件「袴田事件」に関わっており、この事件を振り返るパートをライブの核としていた。

信念すら感じる、「袴田事件」をメイン据えた胆力

 シリアスなテーマに据えてしまうと、当然笑いを起こすのが難しい。僕も若手の時に「殺人事件」をテーマにしたネタをやったが、「犯罪が絡むと笑いにくいから止めた方がいい」と作家からアドバイスされたことがある。

 それくらい芸人はシリアスな話題や犯罪が絡む話題を避けがちなのだが、ライブの中心として「袴田事件」を据えた胆力が立派だ。信念すら感じる。

 警察が捏造した実際の証拠を示しながら、いかに「ありえない証拠だったのか」を説明していくのだが、確かにありえなさすぎて笑ってしまった。

 真面目に説明するところと、ボケの口調で話すところのバランス感覚が見事で、「このパートはちゃんと聞こう」「このパートは思い切り笑っていい」と分かるので、安心して見られた。それに本人がその事件に関与していることで、お笑いライブで取り上げても軽薄に見えないのも大きかった。

 伏線が張り巡らされたライブの構成にも着目してほしい。これは実際に見てほしいので細かく説明はしないが、ライブの途中に散りばめられたボケやワード、舞台の演出が、ライブの終盤にかけて次々と回収されていく。

 特に袴田事件を踏まえたうえで、人の記憶力のあやふやさや証言の不確かさを指摘するような仕掛けもあり、笑いつつもゾッとしてしまうような尖った構成になっていた。裁判ドラマに飛び込んだような高揚感すらあり、エンタメとして最高だった。

「法律あるある」にも見える技術の高さ

 他にも感嘆する点は多々あった。「法律家あるある」が散りばめられ、こたけ正義感が被告人に「罰金または懲役○年になる可能性がある」と説明しているときに、「じゃあ罰金にします」と言われた話など、法律家ならではのあるあるが新鮮で面白い。

 我々は法律の専門家じゃないのでよくあるシチュエーションかどうかは知らないけれども、その様子を想像するだけで面白い。こたけ正義感のツッコミワード「選べるわけないです! サブウェイじゃないんだから」も面白くて、芸人としての技術も高いなと感心してしまった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

「弁論」はfunnyとinterestingの割合が黄金比率で、ただ面白いだけでなく、皮肉や社会批判も織り込んで深みを与えた、凄まじいライブだった。

 弁護士芸人はおそらくこたけ正義感しかいないので、このライブをできるのはこたけ正義感しかいない。また次回の開催が楽しみだ。

(帽子田/芸人、ライター)

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