「刑務所ごはん」汪楠、ほんにかえるプロジェクト著
「刑務所ごはん」汪楠、ほんにかえるプロジェクト著
かつて「臭い飯を食う」とは刑務所に入ることを意味する常套句だったが、受刑者は実際にはどんな食事を取っているのだろうか。そんな疑問に答えてくれるのが本書だ。
著者の「ほんにかえるプロジェクト」は、13年間の服役経験がある汪楠氏が立ち上げたボランティア団体。全国約30カ所の刑務所に収監中の受刑者たちに本を送ったり、文通をして、彼らが孤立をしないように見守っている。
本書は、そのネットワークを活用して、書面で受刑者約200人に刑務所内の食事に関して取材を敢行。その証言通りに再現してレシピを添えたビジュアルブックだ。
主食は朝昼晩とも米7・麦3の割合で炊かれた麦飯。朝食は簡素でお湯に少し色がつく程度というほど薄い味噌汁にわずかばかりの副菜2品が基本だ。調理は、炊事工場で働く受刑者に委ねられ、彼らは早朝4時台に作業をはじめ、遅くとも7時ごろには配食を終えなければならない。ゆえに副菜はほぼ加工食品やふりかけなどの既製品だ。
特徴的なのは、朝食の副菜にきな粉の登場が多いこと。砂糖と塩で味付けされたきな粉はご飯にかけたり、納豆に合わせたり。中には麦飯をスプーンなどで餅状にして手作りきな粉餅にする受刑者もいるという。
3食の中でもっともバリエーションが多いのが昼食。人気はカレーだが、その理由が(ほかに比べ)「味があるから」というから、ほかのメニューの味が想像できる。
さらには、17時前に出される夕食(なので夜の空腹が耐えられないと受刑者はいう)を含め、それぞれの人気メニューや不人気メニュー、さらにクリスマスやお正月などの「ハレの日」献立まで。
受刑者の声を添えて紹介。彼らの暮らしと心情の一端がうかがえる。 (K&Bパブリッシャーズ 1980円)