長谷川町子 尋ね人欄に新聞広告が出された遺骨盗難騒動
■1993年3月
戦後日本を代表する家庭漫画といえばサザエさん。
現在もテレビアニメ版の放送が続く人気作品となっているが、93年3月、作者の長谷川町子さんの遺骨が盗まれるという仰天事件が起きた。
長谷川さんは92年5月27日、東京の自宅で冠状動脈硬化症による心不全で72年の生涯を閉じた。しかし、生前、姉の毬子さんと「70歳を過ぎて体が悪くなったら入院しない。手術はしない。万が一の時は家族による密葬と納骨をすませるまでは公にしないでほしい」と約束をしていた。
このため、納骨式が終わった6月30日に死去が公表されたが、この遺骨が事件を引き起こすとは、この時、誰も想像していなかった。
翌93年3月25日、長谷川さんの遺族の元に「遺骨を盗んだ。返して欲しければ金を出せ。応じるなら新聞広告を出せ」というワープロ打ちの脅迫状が骨壺の写真とともに届いた。
墓を管理している石材店社長に確認してもらうと、周辺のコンクリート目地が切られており、長谷川さんの遺骨は納骨室から盗まれていた。200キロ以上もある納骨室の石蓋はピタリと戻されており、明らかにプロと感じさせる手際だった。