米国では標準医療 まさかの「糞便移植法」で難病も治る
健康な人の便を使って健康になる――。え? まさか……と思うような治療法が注目を浴びている。近い将来、特定の疾患に保険適用され、標準的な治療になるとみられている。
難病の炎症性腸疾患に悩んでいる人にも道が開けそうだ。突然の激しい腹痛、下血、下痢などを引き起こす潰瘍性大腸炎やクローン病、抗生物質の服用によってある種の菌が増殖し、腸内で炎症を起こす偽膜性腸炎などの治療に、健康な人の便を患者の腸内に注入する「糞便移植法」が効果的だという報告が相次いでいる。
日本消化器病学会専門医の江田証氏(江田クリニック院長)は言う。
「日本では、炎症性腸疾患が右肩上がりに増え続けています。これまでは遺伝的な要因が大きいといわれていましたが、それだけでは説明がつきません。そこで、患者さんの腸内を調べてみると、腸内細菌の数や種類が少ないといった分布のパターンに乱れがあることがわかりました。極端な清潔志向、食物繊維が少なく高脂肪な食生活などによって、腸内細菌のバランスが崩れ、炎症性腸疾患の発症に関わっていると考えられるようになったのです」