がん患者の10%が発症 「転移性脳腫瘍」の最新治療事情
「米国の権威あるガイドラインでは、『個数で制限するのは意味がない。患者のコンディショニングで決めるべき』ともされています」
全脳照射は一生に一度しか行えないが、定位照射なら新たに脳腫瘍が見つかった場合もそこに照射できる。日本では現状、脳腫瘍で定位照射と全脳照射のどちらを選ぶかは、担当医の裁量によるところが大きいという。
転移性脳腫瘍の治療として、新たな光になるのではないかと期待されているのが、抗がん剤の一種「分子標的薬」だ。
「これまで、脳腫瘍には抗がん剤が効かないというのが定説でした。ところが、分子標的薬の中には劇的な効果をもたらすものがあることがわかってきたのです」
全脳照射でないと対処できないほど複数個の脳腫瘍があった患者が、分子標的薬の投与によって、短期間ですべての脳腫瘍が消えたという報告もある。
「効かない人に分子標的薬を用いると、その間に脳腫瘍が大きくなり、治療のタイミングを逃すかもしれない。どういう患者に分子標的薬が効くのか、現在研究が行われている段階です」
これから先、転移性脳腫瘍の治療がさらに前進することは間違いない。