終末期の父親が震える手で3人の子供たちに書き残した言葉
病気は次第に悪化していきましたが、悪い日ばかりではありません。奥さんは毎日来院され、受験を控えた3人のお子さんもよく見舞いに来られました。
Hさんの上司だったMさんは、ご自分の詩を書いた絵はがきを、毎日毎日病院に送ってくれました。Mさんは若い頃に故郷で小学校の助教諭をされていたそうです。後になって、この絵はがきをまとめられて「詩集あかね空」(柊益美/山脈出版の会)を出版され、その詩集は今も私の手元にあります。
10月17日の絵はがきです。
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あかね空
いけないな
母さんと あんなに
約束してたのに
あそびすぎ
もう日がくれる
こんなにおそい
どこかの街の どこかの坊や
急いで 走って 帰っていく
あかねの空が 町をそめ坊やをそめて 暮れていく
◇ ◇ ◇