人間の記憶は外部からの情報や圧力で容易に歪んでしまう
ワシントン大学のロフタスとパーマーの研究(1974年)に、「人間の記憶は、外部からの情報や圧力で容易に歪んでしまう」というものがあります。ロフタスは、被験者に自動車事故の映像を見せ、その後、事故についてAグループには「車が激突したとき、どのくらいのスピードでしたか」と聞き、Bグループには「車がぶつかったとき、どのくらいのスピードでしたか」と聞きました。すると、「激突」という言葉を使用したグループの方が、「よりスピードが出ていた」と答えたのです。
さらに、その1週間後に再び同じ被験者を集め、今度は映像を見せずに事故について質問しました。「ガラスが割れるのを見たか」という質問をしたところ、「激突した」と質問した人は、「ぶつかった」と質問した人の倍以上、「割れていた」と回答したそうです。実際には、ガラスは1枚も割れていなかったにもかかわらずです。
「激突」という前提があるから、記憶や証言が歪んでしまう。「ヒトの記憶は、自由と同じで、もろくはかないものだ」とはロフタスの言葉です。ウソと決めつけたり、こういう人物だからと決めつけたりすると、泥沼にハマってしまう可能性がある。ウソを見破ることは難しい。だからこそ、先入観や前提にとらわれないように気を付けなければいけません。