開成vs筑駒vs灘「進学校トップ対決」大学受験実績の“真の雄”は?
「正直なところ、大学受験実績で中高一貫校トップの座を争っているのはうちではなく、筑駒(筑波大附属駒場、東京・世田谷区)と灘(神戸市)だと思います」
こう話すのは開成(東京・荒川区)の学校関係者。東大合格者数首位を40期連続(1982~2021年)で堅持しながらも、実質的には筑駒や灘には及ばないというのである。
「マスコミでは『東の王者・開成』『西の王者・灘』と、この2校がライバルとして扱われるケースが多い。しかし、実際に灘に対抗できているのは筑駒なのです。とはいっても、開成の東大40期連続も凄い記録なのですが」
大手予備校幹部も、開成関係者の言葉に同意する。その理由は、生徒数の違いである。1学年の定員は開成の400人(うち高校から100人)に対し、灘220人(同40人)、筑駒160人(同40人)。少数精鋭の体制をとっているのだ。
■東大合格率では筑駒が他の2校を凌駕
それを踏まえて、この5年間(17~21年)の卒業生総数に対し、東大合格者の割合がどうだったか、3校を比較してみることにする。なお、合格者の中に浪人生がどれぐらいいたかによって、多少のずれは生じるが、最初の年(17年)と最後の年(21年)でほぼ相殺されるので、大きな誤差にはならない。
開成の5年間の卒業生は1984人、うち東大合格者は851人で、その割合は42.9%。灘は1094人のうち436人で39.9%。筑駒は806人のうち512人で63.5%。筑駒の数字が突出しているが、これだけで大学受験実績がナンバーワンということにはならない。意外なのは、灘が開成より下だったことだ。
「関西の学校だけに、京大を目指す生徒もかなりいる。東大だけで見るのはアンフェア」と話すのは灘の元教員だ。21年に灘から京大に合格したのは34人。一方、開成は10人。筑駒にいたっては1人しかいない。
■国公立医学部では灘が圧倒
「京大合格の実績もそうですが、医学部にどれぐらい入ったかも見てほしい。灘の場合は、医学部を目指す生徒が学年の3分の1以上いるのです」
そこで、進学校のもうひとつの指標である医学部を見てみることにする。最難関とされる東大理Ⅲの5年間の合格者数は、開成が53人(2.7%)、灘が80人(7.3%)、筑駒が55人(6.8%)となっている。この東大理Ⅲを含む国公立大医学部には、開成277人(14.0%)、灘394人(36.0%)、筑駒126人(15.6%)が合格。灘が他の2校を圧倒している。
東大なら筑駒、医学部なら灘──。これまで見てきた実績を反映するように、偏差値も筑駒中学と灘中学が73(四谷大塚調べ)と、開成中学の71を引き離している。73という偏差値は全国のトップ。この数字に到達している中高一貫校はほかには見当たらない。偏差値72にランクされているのも渋谷教育学園幕張(女子)の1校だけだ。
偏差値からも筑駒と灘の2校が抜きん出ていることがわかるが、なぜ、ここまでの“化け物”的存在になったのか。
「両校とも、生徒が無理をしているという感じがまったくない。余裕をもって受験に臨んでいる。授業を一度聞けば、復習などしなくても、そのまま頭に入っている生徒が多いのでしょう。地頭のいい生徒が集まっているのは間違いありません」(予備校幹部)
灘は教員に与えられる裁量が大きい
生徒の優秀さだけが理由ではないと話すのは前出の灘・元教員。
「灘では教員に与えられている裁量が非常に大きいのです。各教員がさまざまな工夫をしている。筑駒でも同様だと聞いています」
灘の最大の特長は「担任持ち上がり制」。各教科の教員6~7人で一つのチーム「担任団」を組み、中1から高3までそのまま持ち上がっていく。なお、教員の顔ぶれは6年間ずっと一緒だが、生徒の側は毎年、クラス替えがある。
「灘には6つの学校があると言われます。授業のカリキュラムは教員が自分で考えて決めるので、学年ごとに特色が出てくる。そのぶん、教員にかかる重圧も半端ではありません。自分の受け持った学年が大学受験で、他の年度より悪かったら、やはり責任を感じてしまう。生徒一人ひとりに親身になって接するようになるのです」(元教員)
筑駒では、灘のような担任持ち上がり制は採り入れていないが、やはり教員の持つ裁量の範囲は非常に広い。
「自分で教材を用意する先生も多くて、飽きる授業はほとんどなかった。生徒数が少ないぶん、先生との距離感も近かった」と話す30代後半の筑駒OBは「人生で一番楽しかった時期かもしれない」と振り返る。
灘と筑駒に共通してるのは受験戦争の暗さがないこと。どちらが進学校ナンバーワンかはともかく、学園生活を謳歌する空気に包まれている点が両校の最大の長所かもしれない。
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