サラリーマンが子供を青学初等部に通わせる教育的メリットは? 学費以外にも出費はかさむ
歌舞伎界の最高名跡の市川団十郎、狂言師の和泉元彌、作曲家の筒美京平、バイオリニストの高嶋ちさ子……と数多くの著名人を輩出してきた青山学院初等部。セレブ小学校の代表格だが、学費が飛び抜けて高いというわけではない。初年度にかかる費用は入学金や授業料に施設設備費や給食費などの諸経費を合わせ約146万円。ライバルの慶応幼稚舎(163万円)より低く設定されている。とはいえ、「一般サラリーマン家庭にとっては、けっこうきつかった」と振り返るのは初等部から大学まで青学に娘を通わせた母親だ。
「学費はともかく、イベントがいろいろあって、出費がかさむんです。6年生の時はオーストラリアでのホームステイ。全員参加ではないのですが、子どもからせがまれたら行かせないわけにはいかない。みじめな思いはさせられないですから」
何よりしんどかったのは母親同士のつきあい。
「初等部では給食の配膳をはじめ、さまざまな場面で保護者がボランティアとして手伝うことが求められ、お母さんたちと顔を合わせる機会が多い。高級ブランドを身につけている人が大半で、場違いなところに来てしまったと思い知らされるのです」
彼女たちが乗っているクルマもほとんどが外車。この母親も「見えを張って」外車に乗り換えたが、燃費の悪さに辟易して、すぐに国産車に戻した。比較しても仕方ないと割り切るようになり、気が楽になったという。
「いずれにしても子どもにとって、初等部から青学に行けたのは非常にプラスだった。伸び伸びした学園生活を送ることができた」
初等部の長所は「一人一人を型にはめ込まないところ」だと話すのは同校OBで青学全体の同窓会「青山学院校友会」の元役員。
「僕が在学していた1970年代前半、初等部はいち早く週5日制に踏み切っている。土曜日が休みになり当時は単純にうれしかっただけですが、今から思うと、とても進歩的な小学校だったと感心させられます」
5日制導入の狙いは「時間を家庭に返す」ことだった。学校が児童を束縛せず、個性をいかに伸ばすかに腐心してきたのだ。
ランドセルの代わりに手作りの肩掛けカバンで通学。教科書やノートも必要な時しか持って帰らない。テストの点数で評価すべきではないと、通信簿もなくした。
「昔から個を大切にしてきた校風。改革によって、それがより具現化されたということでしょう」(同)
自由を謳歌する中で才能を開花させた卒業生は数えきれない。世界的ピアニストのフジコ・ヘミング(90)もそのひとり。6年前には初等部の礼拝堂でコンサートを開いた。「ラ・カンパネラを聴き、彼女の青学への思いが伝わってきて涙が出てきました」とOBは話す。同校の人気は右肩上がり。入試まであと5カ月足らずである。
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