文科省は「博士」増加対策へ 高学歴ワーキングプアはそれで本当に解消できるのか?

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 今、文部科学省の「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」計画では、いろいろな方策を尽くして大学院の博士課程後期(博士)を増やそうと躍起になっている。

 日本の博士は、人口100万人当たり123人で漸減傾向にある。英国(100万人当たり340人)やドイツ(同338人)はもとより、急増する韓国(同317人)や米国(同285人)と比べても圧倒的に少ない。日本では、博士課程入学者が2003年には18232人もいたのに、20年後の2023年は15014人にまで減っている。

 その入学者の内訳をみると、社会人が3952人から6237人と63%も増加し、留学生も2643人から3217人と22%と伸び、最近は中国人留学生が増えている。ところが、社会人や留学生を除く博士課程入学者は、同期間で11637人から5560人へ52%の半減となっている。学部卒で大学院修士課程(博士前期課程)を修了後に、博士課程(博士後期課程)に進学する大学院の学生が減っているのだ。

 半減の主な理由を探ってみると、以前は大学院進学がモラトリアム(猶予期間)として選択される傾向があったが、その博士課程まで進学するのは将来設計において、かえってハイリスクになることが広く知られるようになったからと思われる。高学歴ワーキングプアという言葉も話題になった。

 上記プランの文部科学省調査では、修士から博士課程に進学しない理由として、①経済的に自立したい66.2%、②社会に出て仕事がしたい59.9%、③博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない38.4%、④博士課程に進学すると修了後の就職が心配である31.1%、⑤博士課程の進学のコストに対し生涯賃金などのパフォーマンスが悪い30.4%、⑥大学教員などの仕事に魅力が感じられない27.0%などとなっている。複数回答であるが、全体として将来への経済的不安が強いことがよくわかる。コスパが悪いのだ。

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