シブイ!「根津の甚八」は築120年以上の路地裏の隠れ家、名物“クリチたまりしょう油漬け”から
女学生のような女将が切り盛り
ところが、調理場から小走りで出てきたのはほっそりとした清楚な女将さん。まめまめしく動き回りながら親切に料理を説明してくれる。それがまた女学生のような乙女チックな雰囲気。すっかり和んだアタシはキリンの中瓶(700円)と名物クリームチーズのたまりしょう油漬け(600円)、唐味噌をはさんだ栃尾の油揚げ(700円)を注文した。カウンターの右隣は常連の男女、左隣は20代のサラリーマン2人。座敷には女性2人と、サラリーマン風3人の2組だ。
厚みのある新潟名物にからし味噌をはさんでカリッとあぶった油揚げは香ばしくて後を引くうまさ。「ピリッとするように味噌に青唐辛子を刻んで混ぜてるの」と女将さん。こう言いながら「もっと熱くして」という他の客のリクエストに応えて燗をつけている。店内に客は10人ほどだが、ひとりで切り盛りしているのだろうか?
「ええ。だから、お客さまにはご迷惑をお掛けしちゃうこともあるの」
小さな声でそう言ってキャッキャ笑っている姿はホント女学生。リラックスしたアタシは太平山のお燗(600円)とサバの燻製(900円)を追加。このサバもイケる。脂が乗っていて、あんばいがちょうどいいのだ。
女将さんが、前のオーナーが営んでいたこの店を、建物と店名を変えないという条件で引き継いで今年4月で28年。風雪どころか戦火に耐えた木造の建物は築120年以上とか。この地域の文化遺産だ。最近話題の地面師さんたちよ、くれぐれも悪さはしないでくださいよ。
(藤井優)
○根津の甚八 文京区根津2-26-4