著者のコラム一覧
小林佳樹金融ジャーナリスト

銀行・証券・保険業界などの金融界を40年近く取材するベテラン記者。政界・官界・民間企業のトライアングルを取材の基盤にしている。神出鬼没が身上で、親密な政治家からは「服部半蔵」と呼ばれている。本人はアカデミックな「マクロ経済」を論じたいのだが、周囲から期待されているのはディープな「裏話」であることに悩んで40年が経過してしまった。アナリスト崩れである。

特殊詐欺対策で注目のATM引き出し額「制限」…“線引き”めぐり警察庁vs金融機関でせめぎ合い

公開日: 更新日:

 自分の預金がさらに引き出しにくくなるかもしれない。「現在、ATMから現金を引き出せるのは1日当たり50万円までですが、さらにその額が少なくなる可能性が高くなっています」(メガバンク幹部)というのだ。ただし、制限されるのは高齢者のみ。なぜなら高齢者を狙った特殊詐欺が急増していることを受けた、やむを得ない措置だからだ。

 振り込め詐欺などの特殊詐欺は急増している。2023年の特殊詐欺被害件数は1万9038件で前年に比べ8.4%も増加した。被害額は前年比22%増の452億円まで膨らんでいる。危機感を強めた政府(警察庁)は、犯罪収益移転防止法施行規則を改正し、高齢者のATMでの振り込みや現金引き出し制限を強化しようとしている。問題はその線引きだ。

「警察庁は8月に、全銀協でATMを使用した特殊詐欺対策に関する説明会を開き、65歳以上の顧客のATMでの1日当たりの振込額と引き出し額を、それぞれ20万円以下に制限したいとの考えを示した」(同)という。これに対して、金融機関側は、「65歳以上というのはあまりに年齢が低すぎるし、引き出し額20万円も低すぎる」と反発している。「ATMが利用できない顧客が窓口に流れてくることが予想され、対応ができなくなる事態も想定される」(同)というのだ。

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