さらば“大阪ミナミの魔窟”よ!「味園ビル」の最期を見届ける…言葉を失い心で泣いた夜
神奈川から通う常連
その後、店内に白木の祭壇を置いた「なんば白鯨」に移動。長渕剛の曲が流れる店内で、女性スタッフのホタミさんが放った「この店のオーナーの下で働けるのが誇り」とのひと言に、日刊ゲンダイ記者は思わず「ぴぃぴぃぴぃ」と心で泣いた。
だいぶ酔いが回ってきた深夜2時過ぎ、最後に訪れたのは、これまた約20年続くバー「フェイラーズキッチン」。ほろ酔いを通り越し、完全にデキ上がっていたにもかかわらず、「いらっしゃい!」と笑顔で迎えてくれた男性スタッフの何と優しいことか。
たまたま隣り合った男性は、わざわざ神奈川県からやってきたという。こう続けた。
「4年半前に大阪に転勤して味園を知り、それから2年間、週5で通いました。今日は味園で飲むためだけに、新幹線のチケットを取って、ホテルを予約して来たんです。いろんな店が連なってるだけじゃなく、魅力的なオーナーさんがいて会いたいと思う。だから、ただ飲むためだけに神奈川から通うんです」
カネと時間がかかっても、何度でも顔を出したい--。リピートしたくなる魔窟に魅せられた本紙記者は翌朝、ホテルの清掃員の「チェックアウトですよー!」に起こされるのだった。
(取材・文=高月太樹/日刊ゲンダイ)