創業者に特別功労金31億円…パルグループが「井上英隆イズム」を継承するのは容易ではない
パルグループの24年2月期の連結売上高は1925億円、連結営業利益186億円、連結雇用者数7000人を超える企業グループへ発展させた。趣味の囲碁はアマ2段の腕前だ。
井上氏は昨年3月、創立50周年を花道に会長を辞し、相談役に退いたが、「引き際は見事だった」(取引先銀行幹部)という。紳士服の営業で頭角を現した松尾勇副社長を後任会長に据える一方、長男で現社長の井上隆太氏の代表権を外したのだ。
この異例の人事について井上英隆氏は、「今後の経営の責任者は松尾氏であると明確にしたい。井上家は社内から経営を監視する役目を果たす」と説明した。執行は優秀な生え抜き社長に託し、井上家はガバナンスに徹するというわけだ。
■変幻自在だった「井上イズム」
井上氏の経営は変幻自在だ。「羅針盤」となるのは井上氏が経験則から作り上げたトレンド周期表「パルマップ」だ。ブランドの流行時期を記録していくと、ほぼ12年で一巡することが分かったという。これに基づき、次にどんなブランドが求められるかを予測している。年4回ほど開かれるマップ会議では、井上氏を筆頭に役員やブランド担当者が集まり、どのブランドに注力するか戦略を練る。社員からの提案で開発したブランド数は50以上に及ぶ。