著者のコラム一覧
保阪正康作家

1939年、北海道生まれ。同志社大卒。編集者を経て「死なう団事件」でデビュー。「昭和天皇」など著書多数。2004年、一連の昭和史研究で菊池寛賞。本連載「日本史 縦横無尽」が『「裏切りの近現代史」で読み解く 歴史が暗転するとき』(講談社)として好評発売中。

陸軍中野学校出の工作員Aは吉田茂の前で涙した

公開日: 更新日:
総理大臣になる前の吉田茂。駐英大使時代(1938=昭和13=年11月)/(C)共同通信社

 吉田茂の別邸に書生として入り込んだAに対して、吉田は釈放されてから改めてよく観察したようだ。吉田の著作、証言、さらには自らの周辺雑記などを丹念に見ても、Aのことは一行も一言も残していない。吉田は60代後半であり、Aは20代半ばである。人生の観察眼は違いすぎる。吉田にはAは書き残…

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