本田圭佑「虚像と実像」(2)小学生が監督のスネを蹴飛ばした
小学6年の夏、田中に連れられ、ガンバ大阪のジュニアユースの練習を視察に行った。
練習場に到着するなり、当時のユース監督だった西村昭宏(元ヤンマーMF、セレッソ大阪、京都パープルサンガ監督)が挨拶代わりにジュニアユース監督だった島田貴裕(現アカデミー本部スクールマイスター、元ガンバ大阪DF)、田中の3人と組んで「大人3人対本田1人」のボール回しを始めた。
小学生が“鳥カゴの中”に入り、元プロ選手らからボールを奪うのは至難の業である。普通ならすぐに音を上げ、あきらめる。本田は違った。
何分経ってもあきらめない。顔を真っ赤にしながら一心不乱にボールを追い続けた。
「コイツは凄いな」と西村が感心した瞬間だった。本田の左足が西村のスネを蹴飛ばし、動けなくしてボールを奪う。息を切らしながらも不敵な笑みを浮かべる本田に大人たちは呆然とした。
■異常なまでの執着心
田中が口元を緩めながら記憶をたどる。
「小学生のチビが西村に本気でぶつかっていくわけやからね。圭佑が出場した2010年W杯(南アフリカ大会)に西村と一緒に見に行ったんやけど、その時のエピソードを西村が話していたね。<田中さん、あの時の小僧がエラいことになりましたね>って(笑い)。とにかく、圭佑のボールに対する執着心は小学生の時から強かった」
異常なまでの負けず嫌い。1対1の勝負に対するこだわり。ボールへの執着心。同時に、「どんな場面でもブレない」強靭なメンタルが「醸成」されていった。
(敬称略=つづく)