<第7回>完璧なフリー演技の直後、真央が泣きながら私に言った
真央はソチ五輪前から、全国民の期待を一身に背負わされていました。「金メダル獲得」への重圧です。彼女は表にこそ不安な気持ちを出さなかったものの、小さな背中にかかるプレッシャーは私たちの想像以上だったはず。
競技期間中はお互い何も言わなかったのですが、陰ながら気にかけてくれていたことに胸が熱くなり、何とも言えない気持ちが込み上げてきました。同時に、真央だけでなく、スケート仲間やコーチ、スタッフ、両親、ファンの方々。本当に多くの素晴らしい人たちに支えられていたことを実感させられたのは言うまでもありません。
「これでもう引退してもいい。心残りはない」
このシーズン終了(14年3月)をもって現役引退を考えていた私。本番の演技を終えた瞬間、今大会(ソチ五輪)で競技人生にピリオドを打ってもいいという覚悟が高まってきました。
その気持ちを変化させてくれたのが、真央の隣で一緒に号泣した佳菜子でした。(つづく)
▽すずき・あきこ 1985年3月28日、愛知県生まれ。6歳からスケートを始め、15歳で全日本選手権4位。東北福祉大に進学後、一時、摂食障害を患い休養。04年に復帰。10年バンクーバー五輪初出場。13年全日本選手権初優勝。14年ソチ五輪出場。今年3月の世界選手権を最後に現役を引退。