<第8回>モンゴル人力士の日本語が流暢なカラクリ

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「すいません。今の言葉、どういう意味ですか?」

 ペンと手帳を手に力士に取材する記者――ではない。聞き手もマゲを結った力士。しかし、その日本語はたどたどしい。

 この力士が言う。

「入門して1年くらいはペンと手帳が手放せませんでした。稽古中は無理でも、掃除や料理の手伝いをしているときはいつも持ち歩いていました。僕は言葉も何もわからないまま日本に来ましたからね。親方や兄弟子と話していて知らない言葉が出てくるたびに、ゆっくりとしゃべってもらって、発音と意味をメモしていました。自分なりの辞書ですね。言葉が通じなくてつらかったこと? やっぱり、自分の言いたいことを言えなかったときでしょうね。気持ちを伝えようにも、それを日本語でどう言えばいいのかわからない。それが一番しんどかったですよ」

 別のある部屋では、おかみさんが就寝前の自由時間に日本語の授業を行っている。小学校低学年向けのドリルを使って、基礎的な「あいうえお」から教える。

「ウチの部屋はそこまで優しくなかった(笑い)」とは前出の力士だ。

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