「帰化?全然悩まなかった。ハワイのお父さんとの電話は1,2分で終わっちゃったよ」
「25歳になる前、大関になったちょっと後に帰化した」と言う武蔵川親方。国籍のことは微妙な問題ですよね?と聞くとあっさり「そんなことないよ。全然悩まなかった」と言う。異国で働いて生きていくのは大変なこと。しかも彼が属しているのは日本の伝統・文化を守る相撲界。さぞや苦労しているだろうと水を向けても、「大変と思ってないもん」と笑うのだ。
「大関とか横綱は看板力士。だから私は協会のために帰化した。大関や横綱になる人は日本国籍じゃなきゃいけない……それは昔から言われてることだと先代(元横綱三重ノ海)から教えられて、『はい』と言ったよ。全然悩まなかった。ハワイのお父さんに電話したら、『おまえのためなんだから、いいよ。仕事のためなら、やりなさい』と言ってくれた。お父さんはいつも『いつか私は居なくなるんだから』と言って、息子の将来を考えてくれた人だったからね。『国籍は変わっても親は親、息子は息子で、それは変わらない』と言ってた。電話は1、2分で終わっちゃったよ」
国際化した世の中で、日本に来て働く人、日本から海外に出ていって働く人……さまざまな生き方がある。日本に住んでいる我々は、日本で働く外国人を見て、大変だろうなとは思うが、だからといって、手を差し伸べて助けることはめったにない。それが現実だが、武蔵川親方はこう言う。