「いつもアウェー。ひとりでも応援してくれる人がいればそれでよかった」
ハワイの高校時代はアメリカンフットボールとレスリングをやっていた武蔵川親方。アメフトでは大学から勧誘されるくらい活躍したというが、彼が選んだのは大相撲の世界だった。
「もうフットボールはしないと決めて日本にチャレンジの気持ちで来て、絶対に帰らない、と思ってた。大相撲が厳しい世界だということは分かってたから、不安は、言葉がしゃべれないことだけ。言葉では苦労したけど、あとは、そんなに厳しいものじゃなかったよ。先輩後輩、上下関係はハワイにはないけど、強くなればいいんだ、と思ってた。ただ、人の話を聞かないとダメ。何をやってもうまくいかないよ。自分で勝手にやろうと思っても通じない。私は日本に来る前から、『人の話を聞きなさい』と大人たちに言われてたからうまくいった。こちらが話を聞こうと思えば向こうも話してくれる。この世界は厳しいといっても、新弟子の仕事は少しずつ教えてくれる。分からなかったら、もう一度聞けばいい。教えてもらわないとできるわけないけど、丁寧に教えてもらったら、それはできるようになる。相撲も一緒。心と心が通じ合ったら皆がずっと見守ってくれた。ハワイと違うと思ったこと、たぶんいっぱいあったけど、覚えてないよ(笑い)」