リオ五輪出場かマスターズVか 錦織圭を悩ます周囲の思惑
■助成金に依存
しかし、テニス協会にとっては錦織の事情より何より五輪が大切ということになる。
強化の拠点を国立スポーツ科学センター(JISS)やナショナルトレーニングセンター(NTC)の施設に頼り、JOCの助成金にも依存している。他の競技同様、五輪への貢献度、すなわちひとりでも多くの選手を五輪に送り込み、なおかつメダルを獲得して初めて実績が認知され、カネも施設も満たされるからだ。
だからこそ協会は「愛国心」や「日の丸」をエサに錦織を五輪に出場させたいし、五輪を盛り上げて商売につなげたいスポーツマスコミはまるで協会のたいこ持ちみたいに錦織の「五輪出場」をあおっている。この日の記者会見で錦織の「あんまり出たくない」というコメントを「冗談ぽく」とか「冗談めかして」と表現したマスコミが多かったのも、それが錦織の本音であっては都合が悪いし困るからだ。
錦織は脇腹の状態を考えたら、できれば五輪はパスして前後の2試合に集中したいに決まっている。しかし、愛国心をくすぐられ、テニス協会の思惑をむげにするわけにもいかず、ここで「五輪には出ません」と言うことができない。NTCやJISSを利用することもあるだけになおさらだ。