稀勢の里の胸に刻まれた亡き師匠・隆の里の“孤高の哲学”
先代の言葉は深く、胸に刻まれている。
25日、横綱稀勢の里(30)に、漫画雑誌の編集やアニメ制作などを手がけるコアミックスが、化粧まわしを贈ることが発表された。描かれているのは人気漫画「北斗の拳」の悪役・ラオウ。稀勢の里は主人公のケンシロウではなくラオウを選んだ理由として、
「自分の性格的にはラオウというのがあるのかなと思いました。孤独で強いってイメージがありますし」
とコメント。さらに「先代の親方(鳴戸親方)からも『孤独にならないと強くなれない』と言われていました」と続けた。
稀勢の里は1月場所の優勝一夜明け会見でも、11年に故人となった師匠の同様の言葉を引用。「どういう意味かは分からないけど……」と話していた。
相撲評論家の中澤潔氏は「隆の里は独特の哲学を持った力士でした」と、こう言う。
「孤独であれ、というのは入門後の経緯が関連しているでしょう。青森県出身の隆の里は二子山親方(元横綱、初代若乃花)に見いだされるわけですが、同時にスカウトされたのが、1歳年下だった2代目若乃花。2人は同じ夜汽車に乗って、二子山部屋に入門した。しかし、入門後に伸び悩む隆の里とは対照的に、若乃花は78年に横綱に昇進。二子山部屋の後継者として、師匠の娘婿にもなった。そうした光景を隆の里は平幕時代に目の当たりにしていたわけです。同郷で年も変わらないのに、なんで向こうだけ……と孤立を深めたのではないか」