稀勢の里の胸に刻まれた亡き師匠・隆の里の“孤高の哲学”
その時の経緯が、後の原動力になったというのだ。さらに隆の里を苦しめたのが、持病の糖尿病だ。
「力士にしては珍しく読書家。トレーニング方法なども自分自身で勉強し、病気を克服して横綱にまで上り詰めた。だからこそ、『同じ横綱であっても、糖尿病持ちのオレの苦しみは分かってくれない』と思っていたはず。精神力で自分自身を支え、己の道を切り開いた。そうした信念を弟子に受け継がせたかったのです。弟子が他の部屋の力士となれ合うのを嫌っていましたし、タニマチとの交流も深くはなかった。他の横綱と違って、『あのタニマチは信用できるんだ』なんて言葉は、一度も聞いたことがありませんね」(前出の中澤氏)
弟子には徹底して「出稽古禁止」を言い渡していた、故・隆の里。弟子が出稽古先でなれ合ったり、八百長相撲に誘われるのを恐れていたからだという。
敬愛する師匠がたどった「孤高」の道。稀勢の里は継承できるか。