平幕力士が虎視眈々 稀勢の里を追い詰める1824万円懸賞金
こうなると、注目すべきは対戦相手の攻め方だ。
相撲で相手の弱点を狙うのは常套手段。まして、稀勢の里は左おっつけ、左差しが生命線の力士である。ここで痛めた左腕を狙わずしてどうするのか――と、言いたいところだが、負傷箇所を攻めにくいのも、また人情というものだ。
ちょうど16年前、01年5月場所のことだ。当時優勝を争っていた貴乃花(現理事)と武蔵丸(現武蔵川親方)の両横綱。千秋楽の時点で貴乃花は13勝1敗、武蔵丸は12勝2敗。前日の取組で右ひざ半月板を損傷していた貴乃花は本割であっさり負けるも、共に2敗で並んだ優勝決定戦では、上手投げで勝利。自身最後となった賜杯を手にした。
これが小泉純一郎総理(当時)の「痛みに耐えてよく頑張った! 感動した!」という、あのコメントを生んだわけだが、負けた武蔵丸は後に「(相手の)ケガが気になって、やりにくかった」と述懐している。
ただでさえ、稀勢の里は角界が待望した19年ぶりの和製横綱。先場所、左上腕と左大胸筋を痛めたことは、日本中に知れ渡っている。対戦する力士の脳裏に「自分との取組が引退の引き金になったら……」と、雑念がよぎったとしても不思議ではない。