日本人初100m9秒台も 桐生祥秀“五輪メダル”へ厳しい現実
アスリートの体に詳しいフィジカルトレーナーの平山昌弘氏が言う。
「いつもは力んで走る桐生選手が、今回は硬さが見られず久しぶりにスピードに乗った走りでした。以前ゲンダイの紙上で、『日本人はアフリカ系選手に比べて、足を引っ張り上げる時に使う腸腰筋が少ないので、100メートルなどの瞬発系競技には向かない。ただ、大陸系の中国人は、筋トレで鍛えられるアウターマッスルではなく、インナーマッスルや股関節の使い方がうまい』と述べました。先天的な筋肉の違いはいかんともし難い。例えば、日本のバスケット選手があと20年努力しても、五輪バスケットの米国ドリームチームには勝てません。桐生選手が東京五輪でメダルを取ることは厳しいというか無理でしょう。夢を壊すようですが、それは仕方がないことです」
この先、科学的トレーニングの研究が進み、シューズもさらなる改良が重ねられるだろう。日本選手の記録が、例えば0・1秒伸びれば、アフリカ系選手の記録もさらに伸びる。相手も同様に、いや、それ以上に進化するのだから追いつくのは容易ではないのだ。
「短距離選手の用具といえばシューズですが、日本人が靴を履くようになって、たかが70年です。靴は踵から着地するが、日本人が長く履いていたゲタや草履は爪先から着く。特にゲタは歩幅を狭くして歩くものです。長年このような歩き方をしてきたわけだし、靴を履いて走ることでは歴史が浅い。昔に比べてシューズがよくなったといっても、今の日本の選手にはその性能を最大に引き出す走り方ができていない者が多い。195センチの長身でもボルトの走りはとても柔らかく見えるし、上半身と下半身のバランスがいい。桐生選手は今後、ピッチ(脚の回転数)やストライド(歩幅)をより上げるため、効率のよい体の動きを会得することです」(前出の平山氏)