著者のコラム一覧
武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

全仏優勝候補ナダルにあって錦織にない“技術以外”のモノ

公開日: 更新日:

 若い頃からビジネスライクだった。コートでペットボトルのラベルを前に向ける癖は、大会スポンサーを配慮してのこと。ラケットケースをベンチに置くとき必ずストラップのメーカー名を上にする選手は他にない。そんなナダルにとって、140人の雇用は誇りであり新たな勇気なのだろう。

 陸上長距離で皇帝と呼ばれたハイレ・ゲブレシラシエがそうだった。エチオピアでホテルやコーヒー園などを経営し従業員は600人。世界記録を27回更新、オリンピックと世界選手権で6個の金メダルを獲得しては「社員が喜ぶ」と話していた。己の社会的地位をうまくモチベーションに取り込んでいるのだ。

 日本のプロはこうした絆の構築が苦手だ。大リーガーなど自己紹介にこれでもかというくらい寄付や社会貢献を羅列するのに、日本ではまず耳にしない。年収37億円(2017年)の錦織圭も寄付などしているだろうが、聞いたことがない。日本ではスポーツと金を結び付けたくないからか。

 さて、その錦織も今回は楽しみだ。手首の故障は影を潜め、春のクレーシーズンに入ってジョコビッチに2度、ナダルにもモンテカルロの決勝で敗れたものの手応えは十分、昨年の8強までは堅い。ナダルがリズムに乗る前の早いラウンドで当たれば勝機はある。問題は5セットマッチのぎりぎりの場面での精神戦。140人の雇用の差がそんなところで出るのだ。やっパリ、ナダルか。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が