お互いをライバル視…一筋縄ではいかない新人選手の契約金
何年か前、ドラフト当日の話だ。ウチが高校生右腕をドラフト3位で指名した。担当はオレ。パソコンオタクのエラいさんは「四球数が……」とか言って渋ってたみたいだけど、部長に猛烈にプッシュした甲斐があったってもんだ。
オレは控室で指名を確認。苦労が報われたとホッとしたのも束の間、折り返しの4位で金満球団がある高校生右腕を指名したから、顔色が変わった。
同地区にいる似たタイプの右腕で、お互いをライバル視してる。こっちは伸びシロや将来性を加味しての3位だが、実績や知名度は金満球団が指名した右腕の方がはるかに上だ。
どうしよう……。真っ先に頭に浮かんだのは契約金の額だ。3位の高校生なら5000万円、4位なら4000万円が相場だが、なにしろ向こうにはカネがある。3位指名のこっちが5000万円なのに、4位の向こうが6000万円というんじゃ、ウチが指名した高校生右腕も、右腕を育てた野球部の監督も、ウチの球団も立場がない。
会議が終了。控室で指名あいさつの打ち合わせが終わった後、部長に相談したよ。ウチは常識的な額しか出せないし、仮に3位の契約金が4位より安かったら面倒なことになるんじゃないかってね。