中日・岩瀬ほどの大投手がMVPに一度も選ばれなかった意外
西武・松井稼頭央、広島・新井貴浩、巨人・杉内俊哉、中日・荒木雅博ら、今季も多くの名選手が現役を引退した。中でも中日の大クローザー・岩瀬仁紀の引退は個人的に感慨深いものがある。私は虎党だから、クローザーといえば全盛期の藤川球児が思い浮かぶのだが、そんな球児の先にはいつも岩瀬がいた。
ご存じ、岩瀬が記録した通算1002試合登板と407セーブはいずれもプロ野球史上最多であり、かつて大魔神と恐れられた横浜の名クローザー・佐々木主浩をもはるかに上回る。さらに最優秀中継ぎ投手や最多セーブなどの個人タイトルも数々獲得し、中日のリーグ優勝や日本一にも幾度となく貢献。岩瀬は頂点を極めた投手であった。
しかし、なぜか彼にはシーズンMVPの経験がない。これだけの成績を残したレジェンド中のレジェンドであり、優勝経験も豊富なのだから、普通に考えれば1度や2度はMVPに“選ばれて”いてもおかしくないのだが、ただの一度もない。
この“選ばれて”というところがミソで、MVPは記者の投票によって選出される。つまり、岩瀬は2005年に当時の歴代最多となる年間46セーブを記録して初の最多セーブに輝いたときも、その翌年に2年連続で同タイトルを獲得して中日をリーグ優勝に導いたときも、いずれも防御率1点台とほぼ完璧な火消しぶりを見せながら、多くの記者からその年の最優秀選手だと認識されていなかった、ということだ。