ソフトB1位・甲斐野央がかなえた「父のもうひとつの夢」
「甲子園だけがすべてじゃない。もうひとつの夢があるやろ。それを絶対かなえてやる!」
大学3年の秋季大会で活躍した甲斐野央(投手・21・東洋大)は、父の有生さん(60)に力強く断言した。
有生さんは兵庫県の社高校出身。当時は投手として甲子園出場の夢を抱いていたが、事情により途中退部してしまった。野球が嫌いでやめたわけではない。だからこそ、なおさら野球への思いが募ることになった。
父が果たせなかった夢は、子供に受け継がれることになる。甲斐野は3人兄弟の末っ子。
9歳年上の長男は東洋大姫路で、7歳年上の次男は西脇工業で聖地を目指した。
「3人とも、初めて野球場に連れていったのは高校野球の兵庫県大会開会式なんです。やっぱり、甲子園に出てほしかったですから」(有生さん)
しかし、兄2人は甲子園出場を果たせず、悲願は末っ子に託されることになった。「甲斐野の甲は甲子園の『甲』。野は野球の『野』。その中央に立ってほしいという願いから、央と名付けたんです」と有生さんはこう続ける。