貴景勝とV争い 大関高安は稀勢の里の“引退危機”が発奮材料
鬼の形相で3敗力士を退けた。
大関高安(28)が結びの一番で大栄翔と対戦。勝ち急ぐあまり、2度のはたきがあったものの、最後は力強い突き押しで大栄翔を吹っ飛ばした。これで高安は2敗をキープ。4敗目の大栄翔は優勝戦線から脱落した。
高安にしてみれば、いやが上にも発奮せざるを得ない事情がある。それが兄弟子の横綱稀勢の里(32)の凋落だ。
今場所は初日から4連敗を喫し、5日目から休場。8場所連続休場から復帰1場所を経て、この体たらくでは、もう後がない。来年1月場所が“墓標”となりうる可能性も十分にある。
高安はそんな兄弟子を慕い、稀勢の里も弟弟子を、ことのほか可愛がっていた。稀勢の里が横綱に昇進したのは昨年の1月場所後。当時、「高安を大関に引き上げることも使命」と話していた。その言葉通り、高安はその年の1、3、5月場所で34勝し、大関に昇進した。
「高安はよいときも悪いときも、稀勢の里の稽古相手を務めてきた。互いがいたからこそ、横綱と大関に昇進できたといっても過言ではない。それが引退危機となれば、『兄弟子の分まで、オレがやってやる』と気合も入りますよ。今や高安も一本立ちしつつある。ここ1年ほどはケガや不調で兄弟子の状態がよくなかったこともあり、高安も積極的に出稽古に出るようになりましたからね」(ある親方)
これまではいまひとつ勝ちきれず、優勝経験ゼロの高安。そんな大関の覚醒をうながしたとすれば、稀勢の里の苦難も無駄ではなかったということだ。