生き証人3人が語る 平成5年「ドーハの悲劇」の真実<後編>
都並敏史「相部屋だった江尻のメンタルが、日ごとにダウンしていくのが手に取るように分かった。言っておきますが、ラモスさんがパスを出さないのは、それ相応の理由があったからです。ラモスさんというのは<ここで攻め上がり!><今は守備に専念!>と誰もが予測できるようなプレーに対して、彼独特の感性が合わないとパスを出してくれません。経験値と言ってしまえばそれまでですが、僕にはラモスさんがパスを出してくれるタイミング、同じ左サイドのカズと連係しながら攻め上がる呼吸など分かっていた。でも江尻にそれを求めるのは酷でしたね」
森雅史「(熱狂的サポーター集団の)ウルトラスが中心になってW杯最終予選の前、代表選手それぞれの応援チャントのCDをソニー・ミュージックで制作して販売。ヒットチャートの20位くらいに入ったのですが、左SBとして都並さん、江尻さんのチャントは収められていましたが、最終予選前に招集されてドーハで戦ったDF三浦泰さんのチャントはありません。都並さんのバックアッパーは江尻だ! それがサポーター仲間の共通認識でした」