ダルビッシュに論破された“後期高齢者”の張本さんがツライ
だけど、私はちっとも痛快な気持ちになれないでいる。「ダル、よく言った!」ではなく、「あーあ、ついにガチで言っちゃったかあ」といった苦渋の残る心境だ。正直、今の張本さん(ここからあえて敬称を付ける)は球界の制度改革などに影響力がある存在ではなく、週に1回高齢者向けのテレビ番組をにぎわす隠居した頑固者のおじいちゃんでしかないのだから、ここまでコテンパンにやっつけなくてもいいんじゃないか、という思いがある。ダルビッシュはアスリートだから、どんな相手にも常にガチなのかもしれないが、さすがに79歳の後期高齢者にまでそんな真っ向勝負の正論を仕掛けなくても……。
なにしろ、張本さんは1940年生まれ、戦後の苦しい時代を貧困や差別と闘いながら必死で生き抜いて、死屍累々の上にプロ野球で大きな成功をつかんだ人だ。だから自分が信じて、かつ貫き通してきた根性野球を79歳にもなって否定するわけにはいかないだろう。もうあと何年生きられるかわからないのだ。そんな人生の晩年にいる人間が、過去の栄光に浸りながら自分の価値観を守りたいと思うことを私は簡単に批判できない。そっとしておいてあげたい。
だけど、そんな79歳のおじいちゃんも、このたび米国の舞台で活躍する30代の血気盛んな維新志士によって激しく非難された。もちろん、その志士はまちがっていない。ただ単におじいちゃんの心を思うとつらいだけだ。時代に合わなくなった後期高齢者の思いに寄り添いたいだけだ。