「沢村さんの名前に傷をつける」とは2人に失礼すぎないか
今季の沢村賞は「該当者なし」となった。有力候補としては、ともに15勝を挙げて最多勝のタイトルを獲得した巨人・山口俊と日本ハム・有原航平が取り沙汰されていたが、2人とも完投数の不足(山口0、有原1)が大きく響いたようだ。
ご存じ、沢村賞の選考基準は「登板数25以上、10完投以上、15勝以上、勝率6割以上、200投球回以上、150奪三振以上、防御率2・50以下」の7項目で、山口と有原はともに4項目をクリアしている。過去には4項目で受賞したケースもあるのだが、選考委員会の堀内恒夫委員長は2人の受賞を見送った経緯について「これ以上、賞のレベルを下げたくない」「完投なしでいいよとなると、沢村さんの名前に傷をつける」と説明した。
個人的にはずいぶん山口と有原に失礼な物言いだな、と感じた。「沢村さんの名前にふさわしくない」ではなく「傷をつける」である。時代とともにプロ野球の在り方も変化し、現代は構造的な事情として完投が少なくなったわけで、決して山口と有原の不甲斐なさが原因ではない。そんな現代プロ野球に適合して、好成績を残した2人が沢村栄治の名前に傷をつけると言うなら、それはプロ野球の進歩に水を差しているのと同じだろう。