侍J強化本部長に聞いた プレミア12の勝因と稲葉監督の手腕
11月、稲葉篤紀監督(47)率いる野球日本代表の侍ジャパンが、国際大会のプレミア12で優勝を飾った。オープニングラウンド初戦のベネズエラ戦は七回までリードされ、敗戦ムードが漂う中での逆転勝ち。スーパーラウンドと韓国との決勝戦を含めた計5試合はすべて2点差以内という苦しい戦いを強いられながら、日本代表としては2009年WBC以来の世界一を掴んだ。侍ジャパンの強化本部長として稲葉監督を支える山中正竹氏(72=全日本野球協会会長)に、プレミア12の勝因や稲葉監督の手腕を中心に話を聞いた。
■小久保の系譜
――プレミア12の勝因は?
「ベネズエラ戦では負けてもおかしくなかったですし、1~2点差の接戦が多く、スーパーラウンドでは米国に敗れはしましたが、最終的に優勝に結び付けられたことが日本の強さだと思う。大きな自信になりますし、来年の東京五輪に向けて弾みにもなります」
――稲葉監督の手腕をどう見ていますか?
「稲葉監督は情がありながら、ひょっとすると冷徹だなと思うくらいの判断をした。韓国との決勝戦では、先発の山口(巨人)を1イニングで交代させ、レギュラーとして起用してきた松田をスタメンから外した。不調な選手、登板機会が少ない選手、どうしてもそういう状況は出てくるが、個々の選手の意識が高く、勝つために一つにならないといけないという考えを持ってくれていたのではないか。大会を通じて『監督・稲葉』になり切り、コーチ、選手と信頼関係を構築していった。2017年に監督に就任してから、さまざまなことを試し、監督として得るべきものを蓄積してきた。選手の選考にあたっては、試合や球場視察などを通じて、つぶさに選手を見てきた。米国、韓国、台湾など海外の試合をチェックしながら、日本が勝つためには、どういう選手と一緒にやればいいかを考えていた。強化試合ではいろんな選手の見極めもした。強化試合を通じて、戦い方も学んできた。一つ一つ、地道に確認作業をしてきた成果が優勝につながったと思います」
――稲葉監督はプロ野球の監督経験がない。
「監督経験のあるなしでいうと、(前任の)小久保監督も経験がなかった。17年WBCでは準決勝で敗れたものの、選手から不満の声は聞こえてこなかった。選手との信頼関係を積み重ねていたのでしょう。私は、小久保監督が『代表監督』として残したものは、極めて大きいと思う。稲葉監督は小久保監督のもとでコーチを務めた。選手としても08年北京五輪、09年WBCなど国際大会の経験が豊富で、国際大会ならではの戦い方を知っている。全く不安はありませんでした」