シブコ人気期待も…女子ゴルフ「無観客試合」の多大な影響
試合会場であの人気プロのプレーは見られない。
女子プロゴルフの国内開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」(3月5~8日、沖縄・琉球GC)の大会事務局は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ギャラリーを会場に入れない無観客試合にすることを決定。19日に、主催者のダイキン工業、琉球放送、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)が連名で発表した。
新型ウイルスの感染者は増える一方で、政府の場当たり的な対応に国民の不安は募るばかり。大会自体を中止にするか否かはともかく、昨年実績で4日間1万4350人の人気イベントに一人もギャラリーを入れないという選択は賢明だ。
だが、開幕戦が無観客ならそれが前例となる。後に続く大会は「うちはギャラリーを入れて賑やかに開催する」というわけにはいかないだろう。国内の女子ツアーは開幕戦のダイキンオーキッドから、「明治安田生命女子ヨコハマタイヤゴルフ」(3月13~15日)、「TポイントENEOSトーナメント」(同20~22日)、「アクサレディス」(同27~29日)と毎週続き、11月の「ツアーチャンピオンシップリコーカップ」まで試合日程は、ほぼびっしりだ。
■主催企業や売り上げにも多大な影響
あるツアー関係者は「昔なら、それでもいいという主催者はいましたが」と、こう続ける。
「宮里藍が2003年にアマチュアでツアー優勝し、翌年プロ転向した。女子ツアーは老若男女から注目されるようになった。それ以前の女子ツアーは大した盛り上がりもなく、主催者の“お得意さま”を接待するためのプロアマ大会さえ無事に終了すれば、トーナメントは終わったも同然という大会も少なくなかった。ギャラリー数やテレビの視聴率を気にしないスポンサーさえいました。
ところが今は渋野日向子(21)の登場で女子ツアーは観客数が増えて大盛況です。チケットはバカ売れで、彼女が活躍する大会は新聞、テレビで大きく取り上げられますから、主催企業の販促や企業イメージにも多大な影響を及ぼす。試合会場のグッズや飲食関連の売り上げもそうです。主催者やツアー関係者にとって無観客試合は大打撃です」
日本ゴルフトーナメント振興協会の発表では、昨季39試合のギャラリー数は68万2868人(前年比12万5534人増)。10年ぶりに60万人を突破した。これは、ルーキーイヤーの渋野が、8月の全英女子オープンで、日本人選手として42年ぶりにメジャー優勝を遂げて大ブレークしたからに他ならない。だから8月以降の大会で渋野が出場した試合では軒並みギャラリー数が増えた。「今季はもっと観客が集まる」と、女子ツアーの関係者は期待に胸を膨らませていた。
■むなしいガッツポーズ
某スポーツ紙の記者は、「無観客試合は渋野本人に与える影響も少なくない」という。
「全英の渋野は初の海外遠征なのに現地のギャラリーと触れ合い、笑顔でプレーしていた。ギャラリーを味方につけて、声援をエネルギーに変える力がある選手です。ギャラリーがいない静かなコースではモチベーションが上がらないでしょう。参加資格のある米女子ツアーはスポット参戦で、今季は国内ツアーにとどまるのもそれが大きな理由という声もあるぐらいです」
ギャラリーのいない試合で、いくつバーディーをとっても歓声は上がらず、ガッツポーズもむなしいだけ。渋野でなくても、静かな試合会場で淡々とプレーしながら闘争心を燃やすのは容易ではない。
スポーツライターの津田俊樹氏が最後にこう語る。
「確かに無観客での試合は選手もやりづらいでしょうが、ギャラリーの安全を第一に考えれば正しい判断です。でも、私からみれば遅い決定です。今は政治だけでなく、国内のスポーツ界も新型コロナウイルスの感染拡大により、経験したことがない決断力を問われている。先を読む、早い決断、責任から逃げない、いずれも日本人が苦手なことです。今後は大相撲やセンバツ高校野球、プロ野球、その先には最大イベントの五輪もありますから」
生シブコの観戦はいつになるか……。