考える力を鍛えられた近大相撲部時代の「教えない指導」
「物静かなおとなしい子でしたね」
こう話すのは近畿大学相撲部の元部長、南孝之介氏。今年1月場所中に急逝した伊東勝人監督の3歳年上で、朝乃山が大学2年時まで部長を務めていた。
「入学当初はまだまだそこまで強くはなかった。2年、3年と学年が上がるにつれて強くなっていった。真面目でコツコツ取り組んだ結果でしょう。まあ、それでもテレビを見ながら、『もうちょっと早く左上手を取れればいいのに。おっつけて下から取れよ』なんて思っていますけど(笑い)」
当時は同級生の朝玉勢(現十両、高砂部屋)の方が強かったものの、上級生になる頃には逆転したという。
富山商業高校時代はひたすら基礎体力のトレーニングに明け暮れた朝乃山。大学では伊東監督のユニークかつ、考える指導で鍛えられた。
「普通の相撲取りがしない練習もありましたね。そのひとつが土俵に四角のマスを3×3の9個描き、まず中央に立つ。そこで伊東監督が『前、後ろ、横、ナナメ前!』と声をかける。力士はその方向に両足を揃えて跳ぶんです。これは持久力や反射神経を鍛えるため。たとえば、立ち合いで相手が変わった場合、動きについていけなければ変化を食ってしまいますからね」(南氏)