巨人の快進撃を支える「神走塁」 地味ながら凄い3人の正体

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増田大輝(内野手・27歳・5年目)

 セ・リーグ首位を快走する巨人。7月31日現在、13本塁打を放っている4番岡本、5勝を挙げているエース菅野(共にリーグトップ)が目立つが、主力以外にも自身の長所を生かし、チームを牽引している「新星」がいる。増田大輝内野手、北村拓己内野手、高梨雄平投手はどんな選手なのか。

 7月19日のDeNA戦。1点を追う九回1死に内野安打で出塁した坂本の代走で登場すると、すかさず二塁への盗塁を成功させた。2死後、丸の二塁への内野安打の間に、二塁から一気に本塁へ突入。タッチをかいくぐりながら、決死のヘッドスライディングで同点とした。翌日のスポーツ紙には「神走塁」の文字が躍った。

 同2日のDeNA戦でも緊迫した場面で二盗を成功させた。「非常に思い切りがいい。“タカヒコ”くらいにはなっているかもしれない」と、かつて代走のスペシャリストとしてチームを支えた鈴木尚広を引き合いに出した原監督は、同29日にも「見事。集中力、決断力、勇気、彼の野球選手としての格が大きくなった」と称賛。盗塁数は8でリーグ2位につけている。

 19年に巡回打撃コーチを務めるなど、昨季まで巨人のファームで選手育成に尽力した内田順三氏がこう指摘する。

「育成で入った頃は、スピード、守備力は目立っていたが、打撃はまだ非力でスイングが弱く、打撃を課題にして、右方向、コンタクト率を上げることに取り組んだ。打席で粘れるようになり、逆方向へ打てるようになって道が開けた。それと、野球をよく知っていますね。内野守備のポジショニングにしても、周囲へ声を掛けたり、気が配れる。広島の菊池涼に似ているところがあります」

 ポジションは二塁、遊撃、三塁、最近は左翼も守るユーティリティープレーヤー。ウリはやはりスピードだ。

 内田氏が続ける。

「ファームで片岡(二軍内野守備走塁)コーチから盗塁、走塁全般の技術を仕込まれていました。1点ビハインドの九回に代走で出て行って、涼しい顔で二塁へ盗塁を決める。負けたら終わりの場面でスタートが切れて、高い確率で決められるのは、今の球界では増田大だけでしょう。思い切りの良さは、そんなところにも生きています。一塁走者として単打で三塁まで進んでいる。ここ数年、分が悪かった広島の野球を体現しているのが増田大で、今の巨人の強さの一因だと思います」

 一度は野球を諦めた苦労人だ。

 小松島高で主将を務め、近大に進学したものの、2年の時に中退。地元・徳島に戻り、とび職に就きながら、平日は建設現場で働いていた。が、野球から離れたむなしさを常に感じていたという。トライアウトを受けて独立リーグの徳島に入団。2年間プレーし、2015年育成ドラフト1位で巨人に入団した。

 この時の年俸は240万円。三軍からのスタートだった。入団前にすでに結婚し、長男も誕生していたが、優香夫人が徳島で正社員として働いていたことから、単身でジャイアンツ寮に入寮。17年7月に支配下登録を勝ち取った。

 ファーム関係者がこう明かす。

「プロはエリートの集まりだから、育成で入ってきた頃は“バカにしたヤツを見返したい”という思いを感じましたね。外にアピールするタイプじゃないけど、闘志を内に秘めている。内野手だから守れないとダメということで、守備を強化していた。新人時代の春のキャンプなんて、朝の6時半から始まって7時から守備練習。ボールを転がして素手で捕る基礎練習があって、それをシーズン中にコーチに頼み込んでやっていたのを見ました。ファームの時は三塁までフリーパスで盗塁していて、まるで少年野球状態。投手のクセを見つけたり、感性と嗅覚が優れています」

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